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【第7回】2枚の板で音をキャッチする技術

 第7回ではマイクロフォン、通称マイクがどのように音を電気に変えるのか解説していく。マイクの動作原理には大きく分けて2つの種類があり、今回はそのうちの片方である"2枚の板"を使う方法について書いていく。
 
 現在、マイクはどこにでもある身近な存在である。例えばスマートフォンやノートパソコンには、ほぼ間違いなくマイクが搭載されており、多くの人が一つはマイクを持っている時代だ。
 
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iPhone6sの場合、イヤホンジャックの隣の小さな穴の先にマイクがある
 
 
本題のマイクの動作原理について説明していく。
 
 今回説明する"2枚の板"を使う方法で音をキャッチするマイクは、一般に"コンデンサマイク"と呼ばれるものだ。この時点でピンと来た方は物理の授業を熱心に受けていたに違いない。コンデンサとは、2枚の板が平行に向き合ったデバイスのことで電圧がかかると電気を貯めることができる。
 
簡潔にコンデンサマイクの動作イメージを述べると、"電気を貯めたコンデンサの板の間隔を音の振動で変化させることによって電気を流す"のである。
 
 
<コンデンサマイクの動作で重要な3つのポイント>
①音の振動で板の片方が震える
②2枚の板のうち片方は震えやすくするためペラペラ
③あらかじめ電気を貯めておく必要があるので電源が必要
 
 
下図はコンデンサマイクの概要図だ。
2枚の板のうち、ペラペラの方を振動板(青色)、もう一方を固定板(紫色)と呼ぶ。
振動板に音がぶつかると、音の振動が板を揺らし振動板と固定板の間隔(図中記号:d)が小さくなったり、大きくなったりする。この間隔dの変化こそが、音を電気に変換したことに他ならない。
 
尚、図中には描いていないがあらかじめ電気を貯めておく為、固定板を基準に振動板に電圧をかけておく必要がある。
式を用いてもう少し補足していく。
 
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コンデンサマイクの概略図

上でも述べたがコンデンサマイクコンデンサそのものである。コンデンサは電気を貯めることができるわけだが、そのタンクの大きさを容量(記号:C)と言う。

式では、

C = ε × S / d

となり、間隔dが小さいほど容量Cは大きくなり、間隔dが大きいほど容量Cは小さくなる。尚、εは板の間にある物質(今回は空気)誘電率、Sは板の面積であり両方とも値は一定である。つまり、コンデンサマイクは間隔dが変化することで、コンデンサの容量を変化させていることになる。

 

では、なぜコンデンサの容量Cを変化させると電気に変換したことになるのだろうか?

 

それを説明する為にはコンデンサの式 Q = C × V が必要となる。

Qは電荷を意味するが、簡単に電気の元となる粒だとイメージしてもらえれば良い(図中には「+」、 「-」で描いた)。Cはコンデンサの容量で、Vは電圧である。

式を変形すると、

V = Q / C

となる。電荷Qは理想的にはどこにも漏れず一定であると仮定する。すると式から容量Cが変化すると電圧Vも変化することがわかる。

電圧の変化こそが電気信号そのものであり、めでたく音を電気に変換することができた!

 

 

ここからは余談だが、一般にマイクとは手で持って使うタイプをイメージする方が多いと思う。しかし、あの大きさではスマートフォンには到底入らない。実はスマートフォンに入っているマイクもコンデンサマイクなのだが、微細加工を得意とする半導体技術を駆使したMEMSマイクロフォンによって小型化を実現している。

 

MEMSとは、Micro Electro Mechanical Systems(微小電気機械システム)の略で、簡単に言うとすごく小さな電気仕掛けの機械を作り込んで電子部品として使う技術だ。MEMSマイクロフォンの場合は振動板と固定板、板を支える筐体等諸々を作り込む。大きさは1.5mm角よりも小さいイメージだ。

 

興味を持たれた方はぜひ調べてみてほしい。

 

 

RODE ロード / NT1A コンデンサーマイク

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はじめてのMEMS (ビギナーズブックス)

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