WhiteBoard -技術解説とあれこれ-

身近なすごい技術をわかりやすく解説

【第2回】画像データ化機能付きカメラ

 スマートフォンの普及により高画質な写真が撮れるデジタルカメラ(以下デジカメ)は一層身近なものとなった。今や写真は画像データであることが当たり前であり、写真を撮影してからすぐにSNSにアップロードしたり、簡単に加工できるのは写真が画像データだからである。なぜカメラで撮影した風景を瞬時に画像データにできるのか考えたことがあるだろうか?今回は、風景を画像化する技術についてわかりやすく解説していく。

 

フィルムカメラからデジカメへ

 まず十代ぐらいの若い人に向けて、画像データ化機能の無いカメラについて触れたい。一昔前まで多く使用されていたフィルムカメラやインスタントカメラで撮影した写真は一度紙に現像しなければ見ることもできず、ましてや画像データにするためにはスキャナーで写真を取り込まなければならない。最初からデジカメやスマホに親しんできた若い世代は不便と感じるだろう。(私の世代で言えば、修学旅行の写真なんかは焼き増しした写真を友達に配ってシェアしていた。)2000年を過ぎたころからデジカメが普及し始め、一気に写真は画像データであることが当たり前となった訳だが、そこには技術の進歩が大きく関係している。

 

f:id:xxxxmhj:20150621130914j:plain

 

■画像データ化を実現する"イメージセンサ"

 この写真は、私が所有しているPENTAX製K-50という一眼レフカメラの本体内部を写している。本体の中に白っぽい長方形の部品がついており、これがイメージセンサと呼ばれるものだ。カメラの機械的な動作はシンプルで、シャッターを切るとレンズを通ってきた光がイメージセンサに当たるだけである。このイメージセンサに当たった光を画像データ化するわけだが、そこには3つのポイントがある。

 ①カラーフィルタで光を色別に分解

 ②色別に光の量を数値化

 ③数値化された光の量から画像を生成

簡単に言うと、このイメージセンサはセンサに当たった"光の量"を"色別に数値化"することができ、その数値から画像データを作りだしているのだ。

 

f:id:xxxxmhj:20150621130935j:plain

 

■イメージセンサの中身

 下図がイメージセンサを拡大した概念図だ。黒い四角で囲まれた部分が1画素にあたり、1画素は1ピクセルと言い変えることもできる。まず、1画素という言葉を使う時点で、デジカメで撮影した写真はごく小さな"点"の集まりであるということをイメージして欲しい。小さな点の集まりなのだが、その点は人間の目では確認できないほど小さいのだ。

 

f:id:xxxxmhj:20150621130956p:plain

 

 センサの話題に戻ると、下図の1画素はさらに4つに分かれており、カラーフィルタによって赤色用のエリアと青色用のエリア、緑色用のエリアに区分けされている。カラーフィルタとは特定の色しか通さないシートのようなもので、赤色用のエリアでは青色と緑色の光は減衰し、赤色成分だけがセンサにあたるようになっている。4つのうち2つが緑色なのは、人間の目が緑色に対して高感度であり、それに合わせて作られているからである。1画素にあたっている光の色は光の三原色である赤、青、緑それぞれの光の量さえわかってしまえば再現できるので、各画素ごとに各色の光の量を測定しデータとして記録する。あとは、1画素ごとに三原色のデータを元にセンサに当たった光の色を復元し、画面に出すのみである。

 

■1画素の大きさ

 デジカメの写真は人間の目では確認できないほど小さな点の集まりだと述べた。人間の目で確認できないことから、写真には膨大な数の点が印刷されていることが予想できる。では、その膨大な数の点1つずつのデータを取っているイメージセンサの1画素はどれだけ小さいのだろうか?この1画素の大きさは技術の進歩が大きく関係している。

 1画素の大きさを1円玉(直径2cm)と同じ多きさであったと仮定しよう。イメージセンサと同じ画素数だけ1円玉を隙間なく置いていくと、長方形は約66m×100m程の大きさになる。この66m×100mの長方形を3cm以下まで圧縮するとイメージセンサができあがる。実際の1画素の大きさは数ミクロン(um)しかなくイメージすることは困難な小ささである。イメージセンサに画素数が多いほどより高画質の画像データが得られるわけで、1画素をどれだけ小さく作れるかが技術の見せ所のひとつである。イメージセンサは半導体でできており、半導体の微細加工プロセスの進化によってより小さく安価に製造ができるようになった。そのことからデジタルカメラはより小さく、より高画質になり一気に普及したと言える。

 

■最後に

 スマートフォンのような高性能なデジタルカメラは何も意識せずシャッターを切るだけでとてもきれいな画像データを得ることができる。しかし、自動できれいに撮影ができるようになるまでにはたくさんの工夫があり、それを知ることでもう一歩踏み込んだ面白いカメラの使い方ができるかもしれない。

 

f:id:xxxxmhj:20150621131030j:plain